靴下に穴が空いた(ネガティブ編)
靴下に穴があいた(しかも全部の靴下が同時に)
所持金は85円
給料日まであと6日
最悪だ
今日は整骨院でストレッチを受ける日である
スリッパに履き替える病院にもいかねばならない
お座敷での飲み会まである
そのあとはデートだ
彼女と初めてのデートだ
初めてのくせにホテルまで予約済みである
俺は穴のあいた靴下のまま整骨院でストレッチを受け、病院へと向かいスリッパに履き替え、お座敷での飲み会に参加する
そして穴のあいた靴下を履いたまま彼女と初めてのデートを楽しみ予約済みのホテルへと向かう
もちろんホテルで靴を脱がねばならない
俺にとっては地獄のようだ
おまけに俺の足は臭いのだ
彼女は何というだろう
穴の空いた靴下を見て何というだろう
穴の空いた靴下を履いた俺を見て何というだろう
穴の空いた靴下を履いた俺に今から抱かれると想像したらどう感じるだろう
きっとホテルから出ていくさ
初めてのデートで穴の空いた靴下男と一緒に一晩を過ごそうなどとは思わないはずさ
穴の空いた靴下を履くとはこういうことさ
そして今日はクリスマスである
サンタさんにプレゼントをもらうにはどうしても靴下が必要だ
枕元に靴下をおいておかないとサンタさんはプレゼントをくれないらしい
よしんば靴下を用意しても穴の空いた靴下を見てサンタさんはどう思うだろう
ふざけるな、と何も入れてはくれないのではないだろうか
それとも怒りのあまりつま先をすべて穴にされてしまうだろうか
あまりの臭さに燃やされてしまうだろうか
ああ
なぜ俺は
石田純一じゃないんだ
こんな時に心の底から思う
俺が石田純一だったら良かったのに・・・
これほど石田純一になりたいと思ったことは生まれて初めてだ
石田純一になればすべてがうまくいく
意気揚々と整骨院でストレッチを受け、病院で颯爽とスリッパへ履き替え、気兼ねなく飲み会へと参加し、おもいきりデートを楽しむ
もちろんホテルでも彼女は俺にメロメロだ
ポケモン並みにメロメロなはずだ
メロメロを通り越してメランコリーだ
石田純一になりたい
俺が石田純一なら・・・
いやダメだ
俺がもし石田純一になってしまったら靴下がないではないか
サンタさんからプレゼントをもらえないではないか
石田純一巻きのストールで代用できるだろうか
いやきっとサンタさんは激怒するだろう
コレハクツシタデハナイ!
ああ・・・八方塞がりだ
今の俺がまさにメランコリーだ
靴下に穴が空いてしまってはこの世の終わりだ
整骨院へ行けず
病院にも行けず
飲み会に参加できず
デートもできず
ホテルにはキャンセル料をとられ
サンタさんにプレゼントももらえない
おまけに
石田純一にもなれない
穴の空いた靴下など何の役にも立たない
俺の心にはぽっかりと穴が空いてしまった
次回は「靴下に穴が空いた(ポジティブ編)」です
お楽しみに。